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[仏具辞典]火立(燭台)ってなに? 注意点や選び方を徹底解説

この記事では火立(燭台)について詳しく説明しています。火立(ひたて)とはローソクの火を灯すための仏具であり、大切な供養具の一つです。ローソクの火を灯すことの意味や、火立の使い方や選び方についてご紹介します。

2024.01.15

こんにちは。富山県高岡市で仏像や仏具、美術工芸品の製造、卸売業を営んでいる本保です。私たちは、職人技が息づく伝統的な仏具から、現代の住まいになじみやすい手元供養の道具まで、種類豊富な商品を全国の皆さまにお届けしています。

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お仏壇に手を合わせる際、ローソクを立てて火を灯します。お線香にも火をつけるため、お経の本を読むために灯すと思われている方もいるかもしれませんが、それ以上に仏教としての意味合いや役割があり、ローソクを立てるための「火立」は、仏具の基本となる「三具足」に含まれる重要な仏具なのです。

 

今回はローソクの火を灯すことの意味や大切さに加えて、火立の使い方や選ぶ際のポイントなどを解説していきます。おすすめの商品もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

1.火立ってなに?

仏具としての灯りや火立(燭台)には、どのような意味や役割があるのでしょうか。大きく3つに分けてご紹介します。

1-1.火立とは

火立(ひたて)とは、お仏壇でローソクを立て、明かりを灯すための仏具です。古くは、油と油皿を用いて火を灯していました。お仏壇でローソクが広く使用されるようになったのは明治時代に入ってからのことで、それに伴いローソクを立てる火立も普及していきました。

1-2.ローソクの火を灯す意味

仏教においてローソクの火は、闇を照らす智慧の光を意味すると言われており、暗闇の中では明かりが人々の拠り所となり、進む方向を示してくれます。仏様の教えや言葉は、混沌とした世の中に生きる人々にとって、生き方を示し、より良い道へと導いてくれる存在だと考えられています。

 

仏教に由来する「脚下照顧」や「一燈照隅」あるいは「一隅を照らす」といった言葉は、足元を照らす、片隅にいる人々やその居場所を照らすことから、引いては我が身が置かれている状況を見つめ、さらに精進するという意味合いがあります。

 

ローソクの火は仏様からの大切な教えを示すものであるがゆえに、お参りの際には必ず火が灯されているのです。その火は、亡くなった方が迷うことなく極楽浄土へ行くための道しるべとも言われています。

1-3.火立の配置

三具足

五具足

火立、香炉、花立の3点は「三具足」と呼ばれ、お参りに欠かせない仏具の基本とされています。三具足に火立と花立を1つずつ加えた5点を「五具足」と呼びます。三具足は向かって右側から火立、香炉、花立の順で並べ、五具足は火立と花立が対になるように、向かって右側から花立、火立、香炉、火立、花立の順に並べます。

 

火立を1点に減らした「四具足」においては、火立が中央に配置されます。この場合は、自らを燃やすことで周りを照らすローソクを、自らの身を焦がしてでも衆生を救済される阿弥陀様になぞらえている、とも言われています。

2.火立を使う際の注意点

火立を使用するときの注意点を2点挙げました。

2-1.火の消し方

ローソクの火を消すときは、口から出る息で吹き消すことは避けた方がいいでしょう。仏教では、人間の口から出る息というのは穢れたものと考えられており、穢れた息を仏様の火に吹きかけるということは、大変失礼な行為とされていますので、注意が必要です。

 

ローソクの火を消すときには、ローソク消し(火消し)と呼ばれる仏具を用いると、誰でも安全に火を消すことができます。

 

火消しには他にも様々な種類があります。燃えている火にかぶせるタイプ、「仏扇(ぶっせん)」とも呼ばれる火を扇いで消すうちわ、トングのような形で芯をつまんで押さえるものなどです。和ローソク向けには「芯切り」という仏具も便利です。

2-2.火から目を離さない

ローソクに火を灯している間は、万が一倒れると火事の危険性がありますので、その場を離れないよう注意しましょう。

小さなお子さんやペットがいるご家庭、ご高齢の方が使われる場合には、ローソクの炎を模した電気ローソクを使用することもおすすめです。ご自身の状況に合わせ、最適な火の灯し方を検討してみてください。

3.火立の選び方

火立を選ぶときのポイント3つをご紹介します。

3-1.ローソクを立てたときの安定感

火立は火を扱う仏具なので、安全性のためには、ローソクを立てたときの安定感を重視して選ぶとよいでしょう。使う火立に合ったサイズや形のローソクを使うことも大切です。

3-2.他の仏具とのバランス

火立には真鍮、陶器、ガラスなど様々な素材やデザインがありますが、お仏壇に一緒に飾る他の仏具と調和する火立を選ぶことが大切です。仏具一式(具足)をまとめて購入すると、全体の印象が統一されるためおすすめです。

3-3.お仏壇の高さに合わせる

お仏壇の大きさを基準にし、火立にローソクを立てた際に、炎と天井との間の空間にゆとりがあるかを確認しましょう。高さが限られるお仏壇では、炎が天井を炙って焦がしてしまう恐れもあるためです。

4.火立のおすすめ商品

お仏壇やお参りのスタイルが多様化すると同時に、火立も種類が豊富になっています。新作から定番まで、おすすめの商品をご紹介します。

4-1.きざし

上下のカッティングがエレガントな仏具シリーズ「きざし」の火立は、ローソクが最後まで燃焼するような設計を取り入れ、安心、安全に使えるのがポイントです。ローソクを立てる皿の土台部分に、熱が伝わりにくい素焼きセラミックを採用することで熱が皿に留まり続け、ロウが液状のまま保たれやすいという特徴があります。それにより、ロウが最後まで燃え尽きやすくなっています。

 

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固まったロウが残ることはほとんどないので、お手入れも簡単です。また、燃焼中に火立全体が熱くなるのを防ぐため、内側の皿部分と外側の器は分かれています。皿部分を外し、お手軽なカップ入りのローソクを入れて使うこともできます。この設計は特許を取得しており、「想Ⅱ」「isi」のシリーズの火立にも採用しています。

4-2.重目火立

「重目火立」は重量があり、どっしりと安定感があるのが特徴です。シンプルな形なのでどのようなお仏壇にも合わせやすく、倒れる心配をすることなく安心して使用できます。サイズは2寸から9寸までと幅広く揃っています。

 

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4-3.地火灯(じびとう) / ダルマ火立

地火灯

ダルマ火立

「地火灯(じびとう)」は脚部分に独特の段とくびれがある火立で、オーソドックスな形でお仏壇にも馴染みやすく、長年支持されている商品の一つです。適度な重さと安定感があり、サイズも大中小、豊富に揃っています。        

 

お仏壇の大きさによって、火立の高さを抑えたい場合には、脚部分を短くして背を低くした「ダルマ火立」もおすすめです。重厚感がお仏壇に落ち着いた印象を与えてくれます。

4-4.サンまごころ

火を使わない電池式のローソクです。LEDを採用して本物の火のように炎が揺らめいて見えることから、近年人気が高まっています。全灯タイプもあり、炎の部分にあるスイッチを上から軽く押すだけで、点灯、消灯ができます。

 

サイズは小、大、特大の3種類。お手持ちの火立の芯に挿すタイプと、専用のホルダー(樹脂製の火立)がセットされたタイプ、そして乾電池から5秒の充電で10分点灯する充電タイプがあります。

5.まとめ

今回は、お仏壇でローソクを立てるための仏具「火立(燭台)」についてご紹介しました。仏教において、ローソクの火は仏様の智慧を表すと表れており、火立は仏具の中でも重要な灯供養具になります。ご自身のお仏壇に合った火立を選び、毎日手を合わせる際には、可能な限り本物の火を灯したいですね。

 

各宗派や地域によって使用する火立の種類が異なる場合があるため、まずは菩提寺やお近くの専門店でご相談することをおすすめします。専門店にはデザイン、色、素材等様々な火立が揃っていますので、実際に確かめて選んでみてください。

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